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ジュリナはクレドが大事そうに抱えている少女を舐めるように見詰めながら、カツカツとヒールを鳴らして近づいていく。
「いいわ。私が入れてくるから」
「……は?」
予想もしていなかったジュリナの言葉に、クレドはワンテンポ遅れてから言った。
「その娘がキリエね。男が好きな女を風呂に入れようなんて、もっと大人になってからにしなさい」
ジュリナの少し馬鹿にしたような微笑みに、クレドはムッと険しい顔をするが、聞き分け良くキリエを彼女に任せることにした。
クレドはキリエを浴室まで運ぶと、心配そうにチラチラと振り返りながらも社長室に戻った。
ジュリナは目覚めないキリエを、母が子にするように優しく身体を清めてあげた。
そして真っ白な肌を見て、「可哀相に」と静かに呟いた。
汚れも落ちてすっかり綺麗になったキリエに、クレドが社長室から持ってきたであろうジュリナが昔着ていたパジャマを着せてやった。
彼女が今よりも幼い頃に使っていた為、少しだけキリエにとってサイズは大きいが、それも仕方あるまい。
ブラジャーの方は明らかにサイズが違う為、諦めた。
「クレド、運んで頂戴」
浴室のすぐ外で待っていたクレドに声を掛けた。
まるで身内の手術室の前で待っている親族のようである。
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