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色んな装飾にこだわった寝室の広いベッドに寝かせる。
沈み込む身体、安らかな寝息にクレドはホッと一息つく。
「……やっと見つけたのね」
以前からキリエの話を聞いていたジュリナは、祝うようにクレドに微かに笑いかけた。
それにクレドは複雑な思いで頷く。
嬉しいし、言葉にならないほどの幸せが脳内を占める。
だが、あまりにも不可解なことが多い。
クレドの中でずっと引っ掛かっているのは、キリエがフランツ家の戸籍にいないということだ。
まるで何かから逃げるように、このフォレストにやってきた彼女。
その時、クレドはハッとトーマの言葉を思い出した。
『――……お前を嗅ぎ回っている奴がいるらしい』
もしかすると、それはキリエのことかもしれない。
キリエが自分を捜して此処に来たのならば、納得出来る。
しかしこんな危険地区にたった一人の少女が無事にクレドに会えたことが、奇跡に近い。
いや、もしかすると目に見えていないだけで、無事ではなかったのかもしれない。
言い様のない不安が拭えず、クレドはキリエの小さな手をぎゅっと握り締めた。
「とりあえず傷の手当てね。二人とも、出ていきな」
またして自分が率先してキリエの面倒を見ようとするジュリナに、クレドは不満そうに彼女を見る。
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