Whereabouts ‐ 行方 ‐

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 女のシャルレには、ジュリナの言わんとすることがわかる。  恐らくパジャマで隠れているだけで、キリエは体中に傷を作っているのだろう。  それはなんとなくクレドにもわかったが、心配でならないのだ。  片時も離れなくない。 「……わかった」  しかしジュリナ相手ではどうも強く出られず、二人は渋々と寝室から出て行った。  彼女は横たわる少女を見て、いろんな思いを巡らせる。  4年間見守り世話を見た青年が、必死に捜し続けた少女。 自分の身体すら犠牲にして、危険を承知の上にここにいることを望んだ。  そこまで彼が少女に執着する理由はわからなかった。  実際見てみれば、綺麗な容姿だ。  非の打ち所のない顔立ちに、柔からいロングヘアー。  何処か儚げな雰囲気が、守りたいという庇護欲にかられるのだろうか。  一緒にいた時間はたったの5年。  ほぼキリエが生まれてから一緒だとしても、離れて暮らした時間の方が遥かに長い。  逆にその長すぎた時間の所為で、クレドは執着したのだろうか。  理解できない若人の純粋な気持ちに、溜め息をつきながらキリエのパジャマを脱がせた。  フランツ家から此処までの道のりを考えると、この傷だらけの身体も仕方ない。  何度も転んで、擦り傷を作り、体調を崩したに違いない。  彼女もまたここまでして彼に会いに来た。  年をとった所為なのかしら、と考えて嫌気がさす。
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