19人が本棚に入れています
本棚に追加
/155ページ
大人になって数年経ち、29歳になった自分にはわからない青年達の想いは、どこまでも白いものだと痛感した。
膝、腕、背中、腹部、特に足の損傷は酷い。
ここへ来た時は素足だったのだ。
ということはずっと靴も履かずにやってきたのだ。
傷を消毒して、包帯を両足に巻き終わった所で不貞腐れていたクレドとそれを上手く宥めるシャルレを呼び戻した。
「キリエの傷は?」
「大丈夫よ。ただ足が腫れてるから、暫くは歩かない方が良いんじゃない?」
「そう……」
「どうするの? 連れて帰るの? 此処に置くの?」
答えはわかり切っていたが、建前として一応聞いておく。
即答で「連れて帰る」と言ったクレド。
クレドは今日の仕事を全部キャンセルして、シャルレに3万カイルが入った封筒を返した。
キリエを抱き上げると、彼女が起きてしまわないようにゆっくりとした足取りで歩き出した。
「仕事復帰の時は連絡を入れてちょうだい。今日の客のご機嫌取りでもしてもらうわ」
「わかった」
少しだけジュリナの方に振り返り、小さく頷く。
唯一の宝物を腕に抱き、青年はこの穢れた娼館から逃げるように去った。
最初のコメントを投稿しよう!