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いきなりの抱擁に驚いて、思わず何も言えず。
しかし彼女はぎゅっと自分に抱きついて、言葉を紡いだ。
「会いたかったっ、会いたかったよぉ……」
早速泣いている。
昔と変わらない泣き方だ。
キリエは泣く時相手に縋り付いて、嗚咽を我慢する癖がある。
成長した好きな少女に抱きつかれ、嫌な気分など微塵もない。
クレドも彼女に倣い、ぎゅっと抱きしめた。
「俺も、会いたかったよ……」
昔から180度変わった自分を一目で見抜いてくれた。
絶対に自分がキリエを迎えに行くんだと決めていたのに、彼女の方から捜して会いに来てくれた。
そのことに言葉に表せないくらいの歓喜をも感じる。
キリエは改めてクレドを腕の中に感じると、安心に目を細めて、暫く泣き続けた。
彼女の翡翠の瞳から溢れる雫が止まる頃には、もう意識もはっきりと覚醒したらしく、落ち着いて話せるようになっていた。
「怪我……大丈夫か? まだ痛む?」
労わるようにそっと顔を覗くと、キリエは濡れた瞳は細めた。
「大丈夫。自分で治せるから」
「……自分で?」
妙に違和感を覚える言い方に首を傾げる。
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