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キリエは布団から自分の身体を抜くと、患部のガーゼや包帯を取っていった。
消毒液は必要だろうか、そう考えて立ち上がろうとしたクレドは目を見張る。
キリエは損傷の酷い右足に、そっと手を翳した。
そしてあろうことか、その手の平と右足の間に彼女の瞳と同じ翡翠の光がぼうっと灯った。
手の平から発されているのだ。
クレドの記憶の中には、その光景と類似する場面を過去に数回見たことがある。
その怪我はみるみる内に傷を消していき、やがては綺麗な肌色になった。
「……キリエ、お前まさか」
コクンと頷いた彼女は、そっと目を伏せる。
「――わたしはパンドラ、だよ」
――パンドラ――。
世界に一握りしか生存しない特別な能力を司る者。
過去の偉人はそれを"パンドラ"と名づけた。
超能力すらも軽々と超えていく力。
先程キリエが使ったのは恐らく"治癒のパンドラ"だ。
パンドラとは一種類には纏められず、八百万の能力を秘めている。
そんな者達は重宝扱いされ、人身売買にかければ五万という資金が手に入る程だ。
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