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かく言う自分にも、幼い頃からそのパンドラを持っていた。
安全が保障されていたガーネット時代には使う機会すらなく、そのパンドラに気付いたのはこのフォレストに来てからだ。
相手のパンドラに殺されそうになった時、敵のパンドラは発動せずに自分は無傷であった。
相手のパンドラを無にしてしまうパンドラ、"無のパンドラ"を持っていたのだ。
クレドが力を使えば、パンドラで彼を傷付けることは難しい。
クレド自身も自分以外のパンドラを目にするのは、過去数回襲ってきた輩と、今目の前にいるキリエだけだ。
殺傷能力のあるパンドラならばともかく、治癒のパンドラが宿っているとは、喜ばしいことである。
パンドラだと言うだけで人は喜ぶのに、それも治癒を持っている彼女は、あまり嬉しそうな表情ではない。
自分のようなあまり役に立たないパンドラよりも、随分価値がある。
「キリエも途中発見だったんだな。実は俺にもあるんだ、パンドラが」
生まれつきのパンドラではない二人は、成長途中にパンドラが発現した。
キリエは大きな目を見張り、「どんなパンドラ?」と問う。
「俺には、無のパンドラと、"自己回復のパンドラ"がある」
相手のパンドラを無にするパンドラと、自分の怪我と病気を治してしまうパンドラ。
どちらも自分にしか利益のないパンドラである。
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