Pandora - パンドラ -

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 昔から器用だったこともあり、少し練習してみれば上達していったのだ。  幼い頃キリエの好物だった卵料理と、簡単なスープが出来上がった頃、風呂場から彼女が出て来た。  キリエは長い髪の毛からボタボタと垂れる雫を気にも留めず、嬉しそうにクレドの下へと駆けた。  彼の服は彼女には大分サイズが大きかったようで、Tシャツがワンピースのようになってしまっている。 「キリエ、タオル貸して」  そしてすっかり兄気分に戻った彼は、妹分の彼女の頭を、優しくタオルで拭いてやる。 「お腹空いたよ……髪、あとでいい?」  チラリと可愛らしく見上げてくる小さな思い人に、頬が緩む。 「駄目だよ。風邪引いたら辛いだろ」 「はぁーい……」  髪の毛を雫が垂れない程度に拭き終わると、キリエは椅子に座って勢い良く並んだ料理を食べ始めた。  これは好きなやつだとか、久しぶりだとか、おいしいだとか、いろんな感想を言いながら食べる。  昔と変わらない落ち着きの無さは健在だ。  まるで兄のように優しげな眼差しでその様子を見ているクレド。  ただ少し、気になることがあった。  箸、スプーン、フォークが並べてある中で、キリエはスプーンとフォークしか使わず、箸には手を付けなかった。  通常箸で食べるものだってあるのに、それすらもスプーンで掬って食べていたのだ。  箸に持ち変えるのが面倒臭いからそうしただけだろうかと、クレドは少し考える。
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