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「ごちそうさま! おいしかったよ、クレド」
満腹感に幸せそうに笑う無邪気さに、そんな考えもどうでも良くなる。
クレドは基本現金な男である。
こうしてキリエに笑ってもらえたら、もうどうでも良いのだ。
フォレストに来てから、一つ一つの事に過敏になってしまったからその所為かもしれないと、自己完結する。
「髪、ちゃんと乾かしたら、キリエの服買いに行こう。着て来た服も所々破れてたし」
「お洋服買ってくれるの?」
「ないと困るだろ?」
「うん! クレドとお買い物なんてはじめてだね」
キリエはわくわくと、まるで遠足前の小学生のように軽い足取りで、コンセントが刺さったままのドライヤーの前まで行った。
ストンと床に座り込む彼女はそれを両手に取り、髪を乾かそうとする。
何気なしに眺めていると、突如彼女は不思議な行動を取り出す。
電源も入れないまま髪にドライヤーの口を向け、風が出てこないことに首を傾げる。
次はドライヤーを上から、下から、いろんな角度から見てスイッチを探し出した。
ふざけているのかと思い、クレドはキリエに「何してんの」と声を掛ける。
「クレド……? これどうやって使うの?」
やや重い電化製品を困ったように持て余し、クレドに問い掛けるキリエ。
それを不審に思った彼は一瞬眉根を寄せたが、呆れたような微笑を浮かべて彼女の下へ腰を下ろした。
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