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クレドはキリエからドライヤーを受け取ると、スイッチの場所を教えてから彼女の柔らかな髪の毛を乾かし始めた。
キリエは髪に触れられ気持ち良さそうに目を伏せる。
クリーム色の髪の毛は毛先まで綺麗に潤っていて、丁寧に手入れされていた。
波を打つような癖の強いロングヘアーは洋風ドールのようである。
小さな背格好に不釣合いな長さが印象的だ。
髪の毛を乾かし終えると、キリエはもう少し小さめの服に着替え直してクレドと玄関に行った。
裸足のまま来た彼女は当然履く靴もない。
「これ、サイズ大きいけど我慢して」
クレドは踝[クルブシ]のやや上までしかない黒いブーツを履くと、キリエの為に靴棚から昔履いていたスニーカーを出してやった。
「うん、ありがとう」
キリエは床に座ると小さな両足をスニーカーの中に突っ込んだ。
そして覚束ない手付きで紐を解き、途中で脱げてしまわないようにギュッと引っ張った。
それからまたもや紐を結ぶのに手間取っていた。
せっせと何度も結び直すが、待っている内にわけのわからない結び方になっていた。
「何やってんの。貸して」
クレドは呆れたように溜め息をついてからキリエの前に膝を折った。
散々手間取った彼女とは違い、一発で結ぶ。
それに感心したように「すごいね」と言う彼女。
クレドは跪いたまま、食事の時、ドライヤーの時、この時のことを考えて表情を無くす。
もちろん彼女には見えないよう、下を向いて紐を結びながら。
明らかに可笑しい。
幾らなんでも、靴の紐の結び方くらいは知っているはずだ。
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