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そう思ったクレドだったが、この事に何の後ろめたさを持っていない彼女を気遣い、何も気にしないフリをした。
クレドは自宅は他の家の設計と全く同じ造りで、外装も内装も同じだ。
そんな小さな一階建ての家がズラリと横に並んでいる。
ここの住人の中で特に悪さをする奴もいない。
ホテル街周辺に住む輩は柄の悪い悪党ばかりだが、この周辺ではまだマシな人間が多い。
クレドはしっかりとキリエの手を繋いで迷子にならないようにする。
王族のお屋敷で育った彼女にとって、此処は危険過ぎる場所で、同時に変に好奇心を煽られる場所でもあるだろう。
そんな彼女に一人なられては堪った物じゃない。
キリエはキョロキョロと市場を珍しそうに見渡し、時折クレドに「あれは何?」と質問する。
まるで幼子のような仕草をするものだから、昔の姿と重なってどうしても頬が緩む。
そんな彼女はズボンがずり落ちてしまわないように、空いている方の手で布を握っている。
どうやら相当珍しい町並みに興味津々のようだ。
そして擦れ違う男共がキリエを見ているのに気付いたクレドは、不愉快そうに顔を顰める。
中身は子どもっぽいが、外見はもう17歳だ。
通常ならば高校に通うような歳。
17歳という年齢に関わらず、天使のような外見に目がいくのは仕方の無いことだろう。
実際キリエはガーネット時代よりも随分綺麗になった。
クレドも初めて見た時はその成長ぶりには驚いたし、町の男達が見惚れるのも理解できる。
「知らない奴に付いて行くなよ」
自分の物だと主張するように手を繋ぎ、自分の服を着せて歩く。
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