Pandora - パンドラ -

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 フォレストで有名な男娼が連れて歩く少女。  客と男娼という関係性だと思う者ばかりだろう。 こうして歩いていても、普通の恋人同士だと間違われないことが忌々しい。  しかしクレドの恋人だと勘違いをされれば、それはそれで厄介だろう。  自分を殺そうとした男や女が過去にいたことは間違いないし、今だって自分を良く思っていない人間なんて腐る程いるはずだ。  もしその矛先をキリエに向けられたら?  それを考えただけでクレドは恐ろしくなる。  自分の身を守る術を持たない彼女が狙われれば、100%の可能性で殺されるか、犯されるかのどちらかだ。  無法地帯では犯罪など関係ない。  暫く歩いていると二人はトーマが営むスピカに入って行った。  いつも愛想の良い笑みを浮かべて迎える色男だが、今日ばかりは驚きの色を見せる。  空色の瞳を見開いて、目の前にいる二人を見比べているのだ。  あのクレドがこんなに純真無垢そうな少女を連れているのだ。  そりゃ驚くのも無理はない。 「え? まさかついに恋人つくったの? 幼馴染みは?」  クレドがキリエを捜していることを知っていたトーマは、失望したというように大袈裟にこめかみに手を添えてみせた。  クレド以外の人と初めて対面するキリエは少し恥ずかしそうに彼の背に隠れる。 「……これがそのキリエなんだけど」 「え!? 本当に? 見付かったの?」 「そう、3日前に」
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