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彼が全てを捨ててまで欲しがった物が、今目の前にいる数年前の少年と同じような白い少女。
毎日泣きそうな顔をして、残酷な事をする度心を痛めていた優しくも弱い少年は、もういない。
少年はたった一つの宝物の為にこんなにも強くなり、獣にも似た頼もしさと非情を携えた。
「クレド、これとこれ、どっちが良いかな?」
キリエは二つの洋服で迷っているらしく、クレドに決めてと促す。
クレドからしてみれば、どっちも似合うというのが意見である。
「悩むならどっちも買うよ。他は? もっと買っていいよ」
自分とキリエの扱いの差に、トーマはまた笑う。
それを気付きつつも、クレドは無視して続ける。
「パジャマとか、靴とか、下着とか、いろいろ必要だろ?」
「うん……でもそんなに買っていいの?」
「いいよ。金の心配なら、大丈夫だから」
クレドくらいの男娼ともなると、もう金銭で苦労はしないのだ。
更に此処スピカなら、トーマの友人ということでいつも割安で購入している。
何故かトーマは出逢った当初から今日までずっと、何かとクレドの世話を焼いている。
商売に粘着質な彼ならば、割安など有り得ないことだ。
結局キリエは似通った洋服を買った。
デザインの違うブラウスを5着、動きやすいが可愛らしいデザインのハーフパンツ3本、スカートを2着、ブーツを2足、靴下やタイツ、パジャマとネグリジェを買った。
後はクレドの趣味でワンピースを3着程。
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