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「あ、ここに住むならフードのある服もいるんじゃない?」
クレドの両腕にある洋服を見て、トーマは思いついたように言った。
此処ではいつか顔を隠してやり過ごさなければならない局面がくる。
できればそんな目に遭わせたくはないが、絶対に来ないという保証はできない。
現にクレドはいつも藍色の使い込んだフード付き襟巻きを首の周りに巻いている。
「キリエちゃんには、うーん……これが良いんじゃない?」
トーマは何着もある中の一つのポンチョを取り出して、それをキリエの前に広げた。
まるで童話の赤頭巾のような、真っ赤な生地に結び目に大きなリボンが出来るようになっているものだ。
至ってシンプルだが、色とリボンで華やかさが出るし、何よりキリエのような美少女ならば何でも似合うだろう、とトーマは考えた。
「かわいい……絵本で前に見たことあるよ」
キリエは一目でそれを気に入ったらしく、ねだるようにクレドを見た。
自分以外の男が選んだ物という点で非常に不愉快だが、キリエの笑顔のため、クレドはそれも購入した。
全額で結構な値段になったが、クレドにとってなんてことない値段である。
キリエ捜索のために貯めていた資金も必要なくなったわけだし、それを彼女の為に使ってもまだまだ有り余る程である。
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