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クレドはキリエに不審に思ったことを、オブラートに包み質問した。
何故箸を使わなかったのか。
何故ドライヤーの使い方がわからなかったのか。
何故靴紐すらも結べないのか。
過敏になり過ぎているわけではない。
明らかに変だった。
上記の内容の1つだけならともかく、3つも当てはまったのだ。
17年間生きてきたならば、全てこなせるはずだ。
キリエはただただ驚いたように目を見開く。
「え……? わたし、おかしいの……?」
そしてクレドにされた質問に、自分のとった行動を咎められているように感じ、不安そうに眉を下げた。
「……違うよ。そういう事じゃなくて、質問してるだけ。なんでなの?」
悪魔で優しく訊いてやるクレドだが、それでもキリエは不安そうな顔をしたまま一生懸命考える。
「わ、わたし……引き取られてから、おはしも使ったことなくて……それから、ドライヤーもお手伝いさんがやってくれたし、靴紐も――」
そこまで言ってキリエは言葉を区切る。
なるほど、とクレドは2つ目まで理解する。
世界4大帝国のフランツ家の養女のキリエならば、想像できないわけじゃない。
箸を使うような料理が出で来なかった、メイドが身の周りの世話をした、そう考えれば、理解は出来る。
「……あ、」
すると、キリエは続きの言葉が出てこないのか目を見開いたまま固まってしまう。
「どうした?」
クレドが声を掛けても、彼女は何の反応も示さず、ただ呆然と口をパクパクとさせるだけだった。
「キリエ……? 靴が、どうかした?」
再度彼が問い掛けてみると、その小さな体はビクリと縮込ませ、まるで何かに怯えたように顔を真っ青にした。
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