19人が本棚に入れています
本棚に追加
/155ページ
極端に顔の血色が悪くなっていく彼女を心配し、クレドはソファーに座る彼女に前にしゃがんだ。
下から覗き込むと、翡翠の瞳がみるみる内に涙で潤んでいく。
彼女が泣くような質問をしてしまった、それだけはわかったらが、何故泣くのかはわからなくて、クレドは困ったように微笑む。
「俺には言えない?」
寂しそうに微笑む幼馴染みを前に、キリエは慌てて首を横に振って否定する。
「ちが、う」
キリエは零れそうになる涙を堪えて、クレドを見詰める。
「………わたし、フランツ家に行ってから、外に出たことなかったの」
返ってきた内容に、クレドは僅かに顔を顰める。
自分自身、そんな王族生活なんて送ったこともないから彼等の常識なんてわからないけれど、それは普通なんだろうか。
何故?
そう訊いても大丈夫か、クレドは慎重に考えるが、キリエの反応からするとあまり深くは訊かない方が賢明な気がした。
「そうか」
「それから。それから、わたし…ずっと、ずっとっあの部屋にっ」
キリエは小さく開いた口を震わせ、瞳をゆらゆらと揺らした。
焦点が合わない程同動揺する彼女を見て、クレドはその手を掴む。
「大丈夫だから。無理に言わなくて良いよ」
ぎゅっと力を込めるとキリエはハッとしたように目を見開いて、クレドを見詰めた。
「あ……」
「大丈夫。もう怖くないから」
最初のコメントを投稿しよう!