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着ていた洋服を抱えて戻ってきたキリエは、まるで幼女のような可愛らしいパジャマを着ていて、クレドはそれを見るだけで満足していた。
「ちょっとかわいすぎるかな」
キリエは少し恥ずかしそうにフリルの付いた裾を引っ張る。
「いいんじゃない。キリエによく似合ってる」
17歳の少女が着るには少しばかり可愛さが勝っているデザインだけれど、彼女が着れば何の問題もない。
キリエは嬉しそうに目を細めると、ギュッとクレドの腰に抱き付く。
兄気分に浸るクレドはキリエの柔らかい髪を撫でると、もう寝るようにと促した。
1ルームしかない彼の自宅は、当然ながらキッチンもベッドも風呂場に繋がる扉も同じ空間にある。
だから常に傍にいられることに二人ともが安堵する。
一人は護りたいと、もう一人は離れたくないと願っているようだ。
元々孤児だった二人は昔から自然とお互いを求め、寄り添っていたのだ。
クレドが世話を焼くのもキリエが甘えるのも、周囲から見れば少々過剰見えるかもしれないが、二人の間にはこれが普通なのだ。
クレドは、自分が使っていたベッドに潜り込み安息して眠りにつく彼女を暫く眺めるが、飽きる気配はないようだ。
いつから仕事に復帰しようかと考えながらも、頭の隅で今日の夕食もきっちりと考えている。
軽く主夫気質のある彼は、彼女の喜びそうなメニューをうんうんと唸りながら考えているのだ。
それから充分に愛しい寝顔を眺めたり、趣味である一人チェスをして遊んで時間を潰していると、時計の針は夕方の5時半頃を指していた。
白のナイトで黒のキングにチェックメイトを詰めると、彼は腰を上げてキッチンに移動した。
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