Little gir l‐ 幼女 ‐

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「したしい人にはこうして愛情を示すんだって、言っていたわ」  "親しい人"、そう聞いて今にも溢れ出しそうな殺気がふっと和らいだ。  なんとも単純な男である。 「……そう。でも俺は"親しい"っていう狭い枠に分類されるんだ」  一見悲しそうな台詞に聞こえはするが、この男の顔は微笑んでいる。  しかし純粋なキリエは勘違いをして慌てて否定する。 「違うよっ。クレドはもっともっと大きいの! 世界で一番大好きだもん!」  クレドの想像を軽く超える大きな回答に、煽ったクレド自身が呆気に取られる。  半分は冗談、半分はどう思っているのか聞きたくて。  それなのに返ってきた言葉は彼を最高潮にもさせるような言葉だった。  まさか世界で一番という言葉が返ってくるとは予想もしていなかったのだ。  至って真剣な顔をする彼女は、じっとクレドを見上げている。  濁りのない綺麗な瞳に、他人にはわからないクレドのほんの少しだけ照れているような顔が写る。 「お前は優しいな。俺も、世界にキリエだけがいれば、それで良い」 「世界にわたしたち二人だけなんて、さびしいよ」 「そう? 俺はそれで充分だけど」  キリエは困ったように笑うと、クレドの首から腕を離して二人でテーブルに移動した。  相変わらずキリエの好物ばかりが並んでいる。  本来食べることが大好きな彼女は目が覚めて二日目だが、既に彼の手料理が楽しみになっていた。  美味しそうに食べるキリエをじっと見ながら、クレドはテーブルに頬杖をついて口を開いた。
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