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明日の予定をジュリナから言われると、クレドは電話を切った。
その間に綺麗に夕食を平らげていたキリエはキッチンに食器を持って行った所だった。
それから流し台を物色するように眺めると、ハッと何かを見つけたように目が輝いた。
キリエは食器を洗う為のスポンジを手に取った。
それを見たクレドは慌てて彼女を止める。
「いいよ、俺がやるから」
超お嬢様育ちのキリエは食器洗いなど、縁もない物だ。
食器を割ってしまうことはクレドにとってはどうでも良いが、彼女に怪我をされては困る。
しかしキリエは頬を膨らませて、嫌だとクレドを見る。
「わたしが洗いたい!」
丸い平らな皿を左手に、スポンジを右手に持ったままキリエは言う。
どうやら庶民にとって煩わしいだけの食器洗いも、お嬢様には興味の対象のようである。
怪我をさせたくはない。けれども彼女のお願いを無下にすることなんて、この男には出来ないのだ。
「怪我しないように、気をつけてやるんだよ」
「うん! ねえねえ、どうやったら泡立つの?」
キリエはパアッと笑顔になると、カラカラに乾いたままのスポンジを何度も握ってクレドに見せる。
「ああ、これは、水に付けてから洗剤を付けるんだよ」
見本を見せようと、実行しようとしたクレドを慌てて止めて、キリエは「わたしがやる」と言って蛇口を捻った。
「その前に」
気の利く彼はパジャマの長い袖が濡れてしまわないようにと、両腕を捲ってやる。
キリエはお礼を言ってから人生初の食器洗いに挑戦。
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