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クレドは一瞬自分が過保護すぎたかなと思ったが、それも束の間。
彼の予想を上回る程のキリエの不器用さは凄かった。
いや、無邪気故の行動も多々あるのだ。
まず洗剤の染みたスポンジをお気に召したのか、きゃっきゃっと嬉しそうに泡を大量に発生させ、流し台を泡だらけにした。
ネジの一本でも飛んだクレドは微笑ましくそれを見ながら、やれやれとそれを始末すると、次はちゃんと食器洗いに取り掛かった。
だが、お次はスポンジで食器を擦るのをお気に召したのか、擦り過ぎて皿を割ってしまった。
しょんぼりと謝るキリエだがそれすらも気にしないクレドは、微笑みながら「いいよ」と言って割れた食器を片付けた。
流し台を泡塗れにしようが、食器を何枚割ろうが、彼にとっては些細なことで彼女が喜ぶのなら、もうそれだけで感無量なのだ。
少々病的な甘やかしに本人達は気付いてはいない。
「お皿洗いってたのしいね! またわたしにやらせて」
全ての食器を洗い終えたのは時計の針が半周してからである。
キリエの愛らしい笑顔を見れただけで満足なクレド。
「もちろん。怪我はするなよ」
皿を割ることについては全く触れないクレドは、キリエの怪我の心配だけはちゃんとする。
キリエ以外の人間がこんなクレドを見れば驚愕するであろう。
楽しい食器洗いを終えたキリエは、軽くシャワーを浴びるために軽い足取りでまた風呂場まで向かった。
キリエは数分で出てくると、先程のパジャマを着てクレドの手を引く。
「ドライヤー、して?」
下から上目遣いでねだられれば、クレドが断るはずもない。
未だにドライヤーの使い方をわかっていないらしい彼女は、時折髪を撫でられる感触に気持ち良さそうにしている。
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