Little gir l‐ 幼女 ‐

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 ガーネットの頃よく二人で眠った。寂しいと泣くキリエは度々部屋に忍び込んできては、クレドのベッドに潜り込んできたものだ。  いつの間にか眠りに落ちていて、次に目を開けた時にはすっかり朝日は昇っていた。  お互い外出の支度をしてから、手を繋いでスピカに向かった。  トーマは「朝から熱いね~」と呆れながら笑っている。  キリエを店の奥にあるトーマの私宅部屋にやると、クレドは店番の方でトーマに事情を話した。 「俺の仕事中はキリエを匿ってくれ」 「まあ、スピカは唯一セキュリティーがある場所だからねえ。安全だもんね~」  いつ強盗に遭うかもわからないフォレストでセキュリティーシステムが付いているのは、用心深く裕福なトーマのスピカだけだ。 「それと、キリエに俺の仕事のこと喋んなよ」 「わかってるさ。好きな娘を騙すなんて、本当に酷い男だねえ」 「秘密って言っただけで、別に騙してない」 「それで男娼かって聞かれたら嘘つく癖にさ」  不毛な言い合いになる前にクレドは「……それと」と付け足した。 キリエの取った不思議な行動を1から説明した。 「多分キリエは幼児レベルの知識しかない」 「へぇ~……なるほど」  トーマはここにやってきたキリエを思い出し、やけに口調や仕草が子どもっぽかったことに納得する。  クレドに向ける目も純粋な好意しかなく、そこには何の欲や邪も混じってはいなかった。  そう、それはまるで何も知らない幼子が母に向けるような目で。 「だから暇があったらキリエに、読み書きでも何でも良いから教えてやって欲しい」 「りょうかーい。じゃあ俺はキリエちゃんの先生だね」 「それで良い。とにかく頼んだ」 「はいはい。じゃ、ママはお仕事頑張ってね」  クレドは"ママ"と呼ばれたことに嫌悪感は表すも、無視してスピカから出て行った。
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