Little gir l‐ 幼女 ‐

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「キリエちゃーん」  トーマは客が来てしまわないうちに、キリエがいる私宅部屋に行った。  キリエは棚にあったはずの本に興味を持ったらしく、それを腕に持っていた。 「ああ、"赤頭巾"に興味あるの?」 「あかずきん?」 「うん。その本、赤頭巾っていう童話なんだけど、知らない?」  知らないと知っていて問うトーマは、首を横に振るキリエに優しく笑った。 「じゃあその本持っておいで。店番しながら読んであげるよ」 「ほんと!?」 「もちろん」 「これ、中なんて書いてあるかわかんなかったの」  母国語である英語は別に何処かの国のようにひらがな、カタカナ、漢字が入り混じっているわけでもないのに、やはりキリエは本を読むことが出来ずにいたようだ。  キリエは本を持ってトーマと一緒に店番をするために表に戻った。  いつも彼が座っている椅子の横に、もうひとつ椅子を置き、そこにキリエを座らせる。  挿絵が所々入った本は、トーマの持つものでこの赤頭巾だけだったからキリエは興味を持ったのだろう。 「さてさて、じゃあ俺が読むけど、キリエちゃんもちゃんと文字を目で追ってね」 「うん」  デスクに本を開いて置き、トーマは文字を指で辿りながら読んであげた。  時たま客が来たり、昼食を挟んだりで本読みは中断されたが、夕方になる頃には全て読み終えていた。
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