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――同時刻、路地。
褐色の肌と金色の瞳を持つシャルレは、まるで黒猫のように浮浪していた。
ちょうど仕事帰りだったのだ。
いつものように仕事相手とホテルに入っていったのは良かった。
いつものようにそれから客に風呂を勧め、背中を流してあげたりなんてして、いつもは言わないような媚びた言葉の一つや二つ言うのだ。
それが今日は違った。
部屋に入りシャルレが客に背を向けている隙に、懐からナイフを出そうとしたのが運よく視界に入った。
振り返ると客はパッとナイフをしまい、シャルレに気付かれていないと勘違いしたらしい。
いや、勘違いしたかっただけかもしれない。
シャルレの疑心を煽ってしまった客はすぐさま彼女によって毒殺された。
まるで愛する人にする口付けによって、猛毒を飲まされたのだ。
シャルレは財布を盗むと死体を放置したまま、現在に至る。
そのスレンダーな体にタイトな軽装の間には、数多くの薬物が仕込まれている。
クレドのように戦闘能力もパンドラも持たない彼女なりの善処である。
「……またトーマの所で材料買わなきゃ」
薬物、主に毒薬の調合が得意な彼女もまたスピカの常連である。
シャルレも普段は母性が強いが、自分の身を守る為ならば容赦はせずに始末する。
それがトーマに習った教訓である。
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