Pulled trigger ‐ 引き金 ‐

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 クレドとシャルレにこのフォレストで生き残るための術を説いたのは、トーマだ。  3人の中では一番長くフォレストに住み、瞬く間に“フォレストの貴族”にのし上がった彼は他者よりもこのサバイバル生活に注意深く生き残ることだけを考えてきた。  “自分以外の全員を敵だと思え”  それがトーマの信条である。 『他人に感情を持つのは、自分が誰よりも上に立った時だけだ』  人間不信とも取れる彼の信条をクレドとシャルレは少なからず影響を受けて、このフォレストで育った。  クレドとシャルレの現在の人格形成には、トーマが大きく関わっていると言っても過言ではないのだ。  シャルレは少し古いことを思い出しながら、また夜道をふらふらと歩いた。  遠くから聞こえてくる喧騒はいつからか普通になり、道端に野垂れ死ぬ生き物は日常となった。  彼等にとっての非日常とは、“日常”そのものである。  そしてその時、向こう側からバタバタと走ってきた2人組が、シャルレの横を通り過ぎた。  一瞬だけだが、髪の青い少年の顔がチラリと見えた。  シャルレはウンザリと顔をしかめ、走り去っていく背中をほんの少し振り返る。  その2人組は青い鷹の刺青がシンボルの【トルガー盗賊団】の団員だった。  最近やたらとクレドを潰したがっていると耳に留まる。  そういえばクレドが賊に強い反感を買ってしまったのは、すべて自分の所為なのだ。そう彼女は考えた。
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