第一章 Fate - 運命 -

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 ついに涙が溢れ出し、しかし男の子故の意地もあり涙を見られないように下を向く。  カタカタと震える体をそっと抱き締めて、背中を優しく撫でてやる。  他の大人達もキリエが大好きなクレドの気持ちは痛い程わかる分、辛くなる。 「キリエちゃんの為にわかってあげて……幸せになって欲しいよね?」  その言葉を使うのは、ずるいと思った。  好きな女の子に幸せになって欲しいのは当然だ。  けれどその隣には自分がいないのだ。  今までずっと一緒にいたのに、そんなことってあんまりだ。  同じ国とは言え、ワンドと首都ではかなりの距離である。  子どものクレドがそう易々と会いに行ける場所ではないし、もしかするともう二度と会えないかもしれない。  いろんな文句がポンポンと浮かび上がっては消え、本来聞き分けの良い子どもである少年は、園長先生を見上げた。 「……うんっ」  園長先生はホっと安心して胸を撫で下ろす。 「いい子ね、クレド君。きっとまた会えるわ……必ず」  彼女はよしよしとクレドの小さな頭を撫でて、悲しそうに微笑んだ。  園長先生も悲しいのだ。  大事に0から今まで育て大事にしてきた子どもが、遠くへ行ってしまうことは。  しかしガーネットにいるより王族の下にいる方が裕福に暮らせて、学校にもちゃんと通える。  ちゃんとした引き取り人がいる限りは、こちらも涙を呑まなくてはいけない。
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