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ついに涙が溢れ出し、しかし男の子故の意地もあり涙を見られないように下を向く。
カタカタと震える体をそっと抱き締めて、背中を優しく撫でてやる。
他の大人達もキリエが大好きなクレドの気持ちは痛い程わかる分、辛くなる。
「キリエちゃんの為にわかってあげて……幸せになって欲しいよね?」
その言葉を使うのは、ずるいと思った。
好きな女の子に幸せになって欲しいのは当然だ。
けれどその隣には自分がいないのだ。
今までずっと一緒にいたのに、そんなことってあんまりだ。
同じ国とは言え、ワンドと首都ではかなりの距離である。
子どものクレドがそう易々と会いに行ける場所ではないし、もしかするともう二度と会えないかもしれない。
いろんな文句がポンポンと浮かび上がっては消え、本来聞き分けの良い子どもである少年は、園長先生を見上げた。
「……うんっ」
園長先生はホっと安心して胸を撫で下ろす。
「いい子ね、クレド君。きっとまた会えるわ……必ず」
彼女はよしよしとクレドの小さな頭を撫でて、悲しそうに微笑んだ。
園長先生も悲しいのだ。
大事に0から今まで育て大事にしてきた子どもが、遠くへ行ってしまうことは。
しかしガーネットにいるより王族の下にいる方が裕福に暮らせて、学校にもちゃんと通える。
ちゃんとした引き取り人がいる限りは、こちらも涙を呑まなくてはいけない。
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