Pulled trigger ‐ 引き金 ‐

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 明くる日の朝は、あいにくと雨だった。  少女はスピカで万屋に語学を習い、青年は相変わらず仕事に出ていた。  褐色肌の娼婦もまた然り。  そして青髪の少年はトルガー盗賊団のアジトに身を置いていた。  フォレストD区の一角にある基地が彼ら盗賊の本拠地である。  むさ苦しい男20人程がすむそこは、決して綺麗ではなくどちらかと言えば小汚い場所だ。  いくつものランプに囲まれた空間には大きなテーブルと椅子、キッチン、冷蔵庫しかなく、なんとも殺風景だ。 「若、コイツ、どうします?」  しかしその殺風景な中には痛々しく血に塗れた一人の女がぐったりと横たわっていた。  息はあるものの意識はなく、まるで死人のようである。  “若”と呼ばれた少年は、それを一瞥すると興味なさげにくわえられた煙草に火を点けた。 「情報収集はもう終わった。ヤろうが殺そうが好きにしろよ」  その言葉を聞くなりニヤリと下品な笑みを浮かべたのは、一人二人ではない。  ただ二人だけが興味なさそうにしていた。 「またかい若。情報収集は終わったんだ。解放してやれよ」 その一人は鋼の肉体を持つ巨漢・ガラハドである。 「いいだろ別に。そもそもソイツは殺す予定の女だろーが。ヤられて終わるなら感謝して欲しいくらいだぜ」 「何でもかんでも壊すのは、若の悪い癖だな。用済みの人間は捨てちまえよ」 「うるせぇ。いんだよ、これはオレを欺いたバツだ」  ギリッと奥歯を噛み締める彼も、またその一人だ。  青い髪と鋭く釣り上がった瞳が刺々しさを顕しているが、その顔立ちはやはり何処か幼さを含んでいる。
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