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夜明け頃、雨音で目が覚めた少年はむくりとベッドから起き上がり、窓の外を見た。
工業が発達していない町だからか、空だけは綺麗なのだが、あいにくの雨でまるで鉛のようだ。
昨日から姿を消したガラハドと彼女のことを聞くなどしなくてもいいほど、アジトは現状を物語っていた。
一階の一部凹んだ壁に、青痣をつくった男共、消えた女。
確実にガラハドが彼女を逃がしたのだ。
「アイツも、余計なことばっかすんなァ……」
欠伸を噛み締めながらポツリと呟くと、ガタリと扉が開く音がした。
そこに目をやると血塗れになった服装のガラハドがいた。
「こうでもしないと、あの馬鹿共はヤっちまっただろうよ」
「だからアレで良かったんだよ。二度と刃向かわせないように、」
「わかってねーやなぁ全く。遅かれ早かれ傷付くのは、若だろう?」
「……何バカ言ってんだよ。なワケねーだろーが」
少年はふと考えてみた。
もしガラハドが助けなければ、彼女はどうなっていたか。
犯されただけで済んだかもしれないし、そのあと殺されたかもしれないし、誰かの奴隷にでもなったかもしれない。
別に平気だった。
しかしまた、気分の良いことでもなかった。
どれも不愉快には変わりない。
しかも犯されただけ、で気が治まっただろうか。
答えは否。
たとえ半年と言えど、少年は彼女を愛した。
彼女もまた少年を愛した。
わかりきっていたのに無意識に彼女を潰そうとしたのは、可愛さ余って憎さ100倍だったからである。
もう一度昨日の場面を思い出してみた。
ああ、とんでもなく、不愉快だ。
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