Pulled trigger ‐ 引き金 ‐

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 少年はフォレストC区にある敵方の拠点への攻め方、誰が何処の配置か、もしこちらが劣勢になった時の対処、それらの全てを事細かに連中に説明した。  フォレスト生まれでフォレスト育ちの少年は学問などはからっきしだが、こういった戦略などには長けていた。  そしてその真夜中、少年達は見事に敵勢を制圧した。  命令通り敵方は全滅。  その場は血の海と化し、また団員達も血に染まった。 「はあ……はあ……」 「若、大丈夫かい、怪我はねぇか?」  肩で呼吸を繰り返す少年に、ガラハドが心配そうに声をかけた。  おびただしい程に血塗れの少年は、最早返り血なのか自身の血なのかすらわからない。  ガラハドが傍まで寄ると少年は、瞳孔を開いたまま床に倒れている男を睨み付けていた。  彼こそがトップの者だ。  左胸には少年のナイフが深々と突き刺さっている。  ガラハドは口にこそしないがわかっていた。  自らの手でボロボロにした彼女は、このトップの男に利用されていたことを。  それを彼女の“記憶”を介して知った少年の腸[ハラワタ]が煮え繰り返っていたことを。 「チッ……記憶盗るの忘れた」  呼吸を徐々に落ち着かせてからの第一声はそれで、ガラハドは溜め息をつく。 「全く、ヒヤヒヤもんだぜ。若が突っ切っていくんだからよ」 「たりめーだ。オレの首を取ろうなんざ胸糞悪いんだよ」  少年は続けて「後10回殺してもタリねえ」と忌ま忌ましい表情で、死体を踏み付けた。
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