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キリエがフォレストに来てから数日が経ち、その間も家とスピカの往復する生活が続いていた。
最初こそはワクワクしていたキリエだが、それにも最近は飽きたらしくあまり家から出たがらない。
「……」
ソファーの上でぷいと顔を背ける彼女に、クレドはどうしたものかと考える。
「キリエ、トーマの所に行こう」
「いや。クレドも一緒がいい」
「……俺は仕事があるから」
クレドはキリエの返事に一瞬嬉しくて笑いそうになったが、グッと堪えて宥めるように言った。
「もうトーマの所は飽きた?」
優しく聞いてやると、キリエはふるふると首を横に振って否定した。
「トーマはやさしいからすき。……でも、勉強しても全然字が読めるようにならないんだもん」
キリエは自分の傍らに置いている“赤ずきん”の絵本をチラリと見て、悲しそうに眉を下げた。
まるで幼子のように唇を突き出し、思い通りにいかない玩具を投げ捨てたようだ。
「それにトーマ、最近お客さんがいっぱいくるから、相手してくれない」
相手なんかしてもらわなくて良い――即座に思ったことは自身の中に留めておく。
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