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キリエも嫌だと散々ごねた。
ガーネットを出発する直前まで泣き喚いて、クレドの服を掴んで離さなかったのだ。
ガーネットの外に待機させてある車に乗ろうとせずに、門の所でクレドにしがみ付いて離さない。
「いやああああっ……ひっく、クレドもいっしょぉ……!」
フランツ家の遣いでやってきた使用人も困り果てたように、オロオロとどうしようかと頭を抱えている。
ただでさえ甲高い声が、泣いたことによって更にキーを上げてまるで騒音のようだ。
「キリエちゃん。大丈夫よ、今から行くお家はねキリエちゃんが言っていたドールもたくさんあるわ」
「いらない! クレドがいないといやあ!」
キリエに泣き付かれ、悪い気分なんて全然しない。
むしろ自分をこんなに必要としているんだと実感し、嬉しかった。
クレドは自分は年上だから、お兄ちゃんだから、と言い聞かせる。
好きな子に、幸せになって欲しいから。
クレドは決心して、ぎゅっとしがみ付いているキリエを少し離した。
真っ赤な顔は涙でぐちゃぐちゃで、鼻水も垂れている。
滅多に見ない泣き顔。いつも満面の笑みで自分に笑い掛けてくれるキリエ。
(離れたくなんて、ないけど……)
クレドは大きく息を吸い込み、ふうーと細く吐く。
「……キリエ」
穏やかな声で呼びかけると、キリエはピタリと静かになって、嗚咽を繰り返した。
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