第一章 Fate - 運命 -

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 キリエも嫌だと散々ごねた。  ガーネットを出発する直前まで泣き喚いて、クレドの服を掴んで離さなかったのだ。  ガーネットの外に待機させてある車に乗ろうとせずに、門の所でクレドにしがみ付いて離さない。 「いやああああっ……ひっく、クレドもいっしょぉ……!」  フランツ家の遣いでやってきた使用人も困り果てたように、オロオロとどうしようかと頭を抱えている。  ただでさえ甲高い声が、泣いたことによって更にキーを上げてまるで騒音のようだ。 「キリエちゃん。大丈夫よ、今から行くお家はねキリエちゃんが言っていたドールもたくさんあるわ」 「いらない! クレドがいないといやあ!」  キリエに泣き付かれ、悪い気分なんて全然しない。  むしろ自分をこんなに必要としているんだと実感し、嬉しかった。  クレドは自分は年上だから、お兄ちゃんだから、と言い聞かせる。  好きな子に、幸せになって欲しいから。  クレドは決心して、ぎゅっとしがみ付いているキリエを少し離した。  真っ赤な顔は涙でぐちゃぐちゃで、鼻水も垂れている。 滅多に見ない泣き顔。いつも満面の笑みで自分に笑い掛けてくれるキリエ。 (離れたくなんて、ないけど……) クレドは大きく息を吸い込み、ふうーと細く吐く。 「……キリエ」  穏やかな声で呼びかけると、キリエはピタリと静かになって、嗚咽を繰り返した。
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