Behind ‐ 背後に ‐

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「いつもクレドが遊んでるやつだ」  勝手に触ってもいいのだろうかと考えたが、クレドが怒るわけないと決め付け、キリエは黒のナイトを手に取った。 「おうまだ。可愛くない」  ナイトを適当なマスに戻すと、次は黒のキングを手に取った。 「……ギルみたい」  ポツリと呟き、ふと彼の顔を思い出した。  キリエにとってクレドは白で、ギルという者は黒であった。  見た目だけならまるで対の二人だ。  あの拷問のような過去を振り返っても、キリエは特に震え上がる様子も酷く怯える様子もない。  感覚が鈍っているのか、負の感情が乏しいのか。  その時、ベッドのすぐ横にある窓が、コンコンと叩かれた。  ビクリと反応して、キリエは即座に「はい!」と返事をしてしまった。  よく物語にある、すぐ開けますという光景を思い出したが、クレドの言い付けを同時に思い出した。 「……そうだ。開けちゃダメなんだった」  窓の外にいる人物もわからず、かといって客を無視するもの気が引け、キリエはどうするべきか悩む。  その末、ベッドに膝立ちになり窓にそっと両手をついた。 「だれ? クレドなの?」  問うと窓の外にいた人物は「違う」とだけ返してきた。  クレドと同じような男の声だった。  それに妙な親近感を覚えてしまったのか、キリエは少し頬を緩ませた。
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