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――その窓の外にいたのは、あの少年だった。
青い髪と鋭い瞳を持つ、トルガー盗賊団の“若”である。
予想通り返ってきた少女の声に、少年はニヤリと笑う。
少年の企みはこうであった。
最近クレドにできたらしい女に接触して、その女を介してクレドに関する記憶を知ること。
トーマ、シャルレ、ジュリナとクレドに近しい人物はそれなりに知っていたが、どれも近付くには無理があった。
特にトーマは少年に対してカナリの敵対心を持っていたから、それは無駄だとわかっていたのだ。
ならば最近出てきたばかりの、何も知らなそうな少女にすればいい。
「窓開けろよ」
ぶっきら棒に言うと、窓に張り付いた少女の影がオロオロと困ったように揺れた。
「開けちゃダメって言われてるから、ダメ」
返ってきた声は澄んでいて、明るさが滲み出ていた。
その瞬間に少年は、少女に対し嫌悪感を抱いた。
――ああ、嫌な分類である。
少年は自分と対極にある類は嫌いだった。
いかにも純粋そうで、無邪気な人間。
何故こんな人間がフォレストにいるのか奇妙だ。
そんな人間が大嫌いで仕方なかった。
今すぐ窓を叩き割って乗り込んで、少女をボロボロにしてやろうかと考えたが、そうすれば自分の計画がすべて狂う。
それにこんな馬鹿そうな少女ならば手玉に取るのも簡単だろうと、少年はほくそ笑む。
「……おい、名前、なんてゆーんだよ」
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