Behind ‐ 背後に ‐

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 キリエはいいだろうかと数秒考えるも、新しい出会いに胸を踊らせていた。  少女の世界は狭く、護るためとは言え実質自由はほとんどないのだ。 「キ、キリエ!」  思い切ったような声で返ってきて、少年は興味なさげに「ふーん」と漏らす。 「君は? おなまえ、なんていうの?」  今度は自分に問われ、少年もまた迷った。  この少女に本名を言っても良いのか。  わざわざ偽名を使うのも面倒だし、別に今まで偽名なんて使ったこともなかったのだ。  少年は軽い気持ちで、まあいいかと一息つく。 「ヨシュアだ」 「ヨシュア……? ヨシュアってよんでもいいの?」 「好きに呼べよ」  早いところこの少女と仲良くなり、クレドの情報を手に入れる。  それを成すためにヨシュアは、こんな面倒でしかないこともやる。 「窓、開けろ」 「ダメ、開けないよ」  相手の記憶を覗くためには、相手の体の一部に触れる必要がある。  ヨシュアは舌打ちして、頭をガシガシとかく。 「で、でもね……わたしと友達になってくれたら、開けてもいいよ」 「は?」  一瞬呆気にとられた。  まさかフォレストにこんな脳天気な少女がいるとは思わなかったからだ。  ヨシュアは予想もしていなかった言葉に戸惑う。  友達なんてものは昔からおらず、トルガー盗賊団の仲間としかつるんだことがない。  盗賊団のメンバーは友達というよりも仲間という方が正しく、そんな甘い関係ではなかった。  ましてやこんな普通そうな、決してフォレストにはいない少女の知り合いなんていなかったのだ。
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