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仕事柄女性の下着姿なんて飽きるほど見てきたクレドにとって、今更キリエの下着姿を見ても特別動揺などはしなかった。
体の発育が良いとは言えない、どちらかと言われればカナリ遅い方の彼女は、言うなれば幼児体型だ。
質の悪いロリータ好きには堪らないだろうが、生憎とクレドにはそんな趣味はない。
ただ彼女が好きなだけだ。
ブーツを脱いで部屋に上がり、着替えよりも先にキリエの髪の毛を乾かしてやった。
一点だけにドライヤーを当てるのはあまり良くなく、クレドは次々と小さく移動して綺麗な髪の毛に風を当ててやる。
時折鼻歌を歌う彼女に「何の歌?」と聞くと「ギルにならったうた」と答えた。
ギル――その名前に反応したクレドは一瞬だけ乾かす手を止めたが、すぐに再開する。
「前にも言っていたよな。ギルって誰なんだ?」
クレドは器用にも仏頂面なまま、声だけは優しく問う。
「ギルはねー、すっごくやさしい人なんだよ。わたしと一緒にあそんでくれたの」
無邪気に答える彼女は、そのギルという人物に親しみや愛情を感じているらしく酷く優しい顔をする。
「それにね、さびしい時もずっとそばにいてくれたの」
自分で聞いておきながら、クレドは更に不快な気分になった。
何故ならクレドはキリエがここへ来てからというものの、仕事仕事で全然彼女に構ってはいなかったからだ。
1日の大半はトーマに預けているため、クレドよりもトーマと過ごす時間の方が長いと言っても過言ではない。
別に責められているわけではないのに、暗にそう言われた気がした。
それでも仕事を辞めないのは、ジュリナに対しての恩があるからだ。
あの時自分を拾ってくれたジュリナには、周囲が思っているよりもクレドには強い感謝があった。
辞めたいと言えばジュリナは、何の尾も引かずに辞めさせてくれるだろう。
だが、仕事は辞められない。
これがクレドがジュリナに示す不器用な感謝の形なのだ。
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