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クレドは昔によく彼女に泣かされていたことを思い出し、思わず苦い顔をなる。
キリエも泣き虫だったが、クレドも負けないくらいの泣き虫だった。
クレドにはあまり掘り返したくはない思い出であるが、キリエにとってはそれらも全て覚えておきたい宝物なのだ。
「ごめんねクレド、泣かない?」
「泣かないよ。もう俺だって大人なんだから」
そう言って頬にある彼女の手を離し、そのまま軽く掌に口付けを落とす。
「大人? クレドが?」
「うん。キリエも来年にはもう大人だよ」
「どうして?」
「この国では18歳からもう大人なんだよ」
キリエには大人から程遠いと自覚はある。
しかし彼女にとってはクレドもまた、大人からは程遠い位置にいると思っている。
彼女の中のクレドはまだあの頃とリンクしたままだ。
こんなに何もかもが変わってしまったにも関わらず、ずっとガーネットにいた優しい時間で留まっている。
それが彼女の時計だ。
すっかりと話が逸れてしまい、クレドはまたでいいかと小さく溜め息を吐いた。
隣の当の本人は本当に先ほどの話題にはもう関心はないらしい。
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