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(男の子なんだから、泣いちゃだめだ)
一生懸命、涙が流れてしまわないように目の下に力を入れて数回瞬きをする。
最後くらいは、笑顔で。
強張っていた口元を不器用に緩め、目尻を下げる。
大人達から見れば、それは痛々しい笑顔だっただろう。
それでもキリエの前では泣きたくなかった少年は、健気に今できる精一杯の笑顔をつくった。
「絶対にむかえに行くよ――」
そう一つ一つの声を大事に振り絞るように、誓うように伝えてから、そっと少女の頬を両手で包んだ。
ふにふにと柔らかい頬を引き寄せて、桜色の震える唇に、そっとキスを落とす。
クレドは周りの目も気にしていないし、恥ずかしいとも思わなかった。
ただ自分の気持ちを伝えたかった。
本当はまた会えるのかなんてわからない。
でもそう言いたくて、いつか実現させたくて、そう誓ったのだ。
「約束だからね、キリエ」
キリエは涙に濡れた目をパチパチと瞬かせ、クレドをずっと見詰める。
そんな視線が妙に照れ臭い。
クレドは自分が毎日肌身離さずに首から下げていたネックレスを外すと、それをキリエの首に下げてやった。
ロケットの見開きには、いつかの写真のキリエとクレドの写真が入っている。
自分に下げられたネックレスを見たキリエは、さっきまで盛大に泣き喚いていたとは思わせないような、満面の笑みを見せてくれた。
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