Behind ‐ 背後に ‐

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 そう、この日、キリエと仲が良かった少女が、実の親に引き取られたのだ。  血の繋がった父と母に引き取られることは、かなりの低確率だった。  だいたいの子ども達は、親による虐待や、身勝手に捨てられた者が多くを占めていた。  キリエとクレドはその捨てられた子どもだった。  しかし引き取られた少女の家は資金に余裕がなく、少女を満足に育てられなかったのが理由であった。  ならば資金の余裕ができれば迎えが来るのが当然だったのだ。  ママ、パパ、と戸惑いながらも家族に会えた嬉しさを滲ませ駆けていく少女を見て、キリエは悲しくなったのだろう。 『……キリエもママとパパほしいっ』 『泣かないで……』  泣く泣くキリエを宥めていると、次はクレドまで涙が溢れそうになり、ゴシッと目元を拭う。 『クレド……クレドも、ママとパパ、ほしいよね?』  そうだよね、と問われ、クレドは正直に小さく頷く。  それを見たキリエはむくりと起き上がった。 『キリエ……?』 キリエは涙で濡れた顔をパジャマの袖でゴシゴシと拭い、震える声で告げた。 『じゃあ、いまからさがしにいこうよ。キリエたちのママとパパ』  あまりにも急な提案にクレドは目を見開き、即座に園長先生たちにバレた時のことを思い巡らせた。  外はもう夜だ。園長先生たちすらももう寝入っているような時間で、きっと二人が上手くやれば抜け出せる。  しかしいずれ必ずバレることも、クレドにはわかっていた。
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