Behind ‐ 背後に ‐

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 クレドは覚えている道のりを進んだ。  ずるずると鼻を啜るキリエの手はしっかりと一回り大きな手を握っている。  二人は小さなその足で歩き続けた。    見知った景色がなくなっていくことに不安にかられるクレドを、次はキリエがぐいぐいと引っ張った。  『だいじょうぶだよ』『こわくないよ』と愛らしく笑って、クレドを元気付けた。  その度クレドは自分が情けなくなりながらも、必死で緩まる涙腺を引き締めたのだ。  二人がワンドから出た頃、まだ辺りは真っ暗で、空の黒と地の白のコントラストだけが視界に広がっていた。  町並みは次第に見えなくなった代わりに見えてきたのは、深い森である。  見たこともないような暗闇の森に、二人は戦慄し、互いの手をギュッと握った。 『……ケホッ』  その時、久々に口の開いたのはクレドだったが、それはただの咳であった。  そしてその咳で堰を切ったように、ゲホゲホと酷い咳を繰り返した。 『クレド? だいじょうぶ?』  風邪をひいて寝込む前と同じ症状のクレドを心配して、キリエは彼の顔を覗き込む。 『う……だいじょう、ゲホッゲホッ』  何度も咳をしたからかクレドの目尻には涙が溜まり、その表情は苦しそうに歪んでいた。  キリエはどうすれば良いのかわからなくなり、クレドの背中をゆっくりとさする。 『っ……クレド、くるしい? あるける? あるけなかったら、キリエがおんぶするよ』  以前キリエが転んで足を怪我した時、クレドがそうしたから少女も今それと同じことをしようと思ったのだろう。  しかし自分より小さく細い少女にそんなことが出来ないのはクレドもわかっていた為、フルフルと首を横に振った。
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