Behind ‐ 背後に ‐

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 ぼんやりとしてきた頭に、熱い体の芯、徐々に痛み出した喉。  クレドは今までの経験から、自分がまた発熱したのだと気付いた。  自覚すると一気に体が重くなり、どうしてわざわざこんな時にと、クレドは泣きたくなった。  辺りを見回すも、民家らしき建物は一つもない。  最初こそ引き攣った笑顔で鼓舞していたキリエも、徐々に徐々にその表情は不安と焦燥に変わっていき、しまいには泣き出してしまった。 『うわああああんっ……ひっく、う、ぇ……園長せんせぇ っ』  何故ガーネットから出てきてしまったのか、何故自分には両親がいないのか、何故クレドは今自分をいつものように笑って宥めてくれないのか。  いろんな思いがぐるぐるとキリエの中を駆け巡り、それらは涙となって溢れてきた。  一方のクレドは体の怠さに気力すらやられ、ぜーぜーと荒い呼吸を繰り返す。  何とかしなければと思うのに、この現状は何ともなりそうになかった。  ついに二人は疲れ果て、一本の太い樹の幹に寄り添うように座り込んでしまった。 『かえりたいよぉ……っ』  しくしくと泣くキリエは、熱で浮かされたクレドをギュッと抱きしめた。  クレドは少女の狭い腕の中で、寒さと虚しさをただ噛み締めた。  暫くすると少女の泣き声は止んだ。  チラリと上を見てみると、少女は目をつむり、カクカクと船をこいでいた。  少年もそんな少女を見て気が緩んだのか、ゆっくりと瞼を下ろした。
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