Behind ‐ 背後に ‐

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 うつらうつら意識を失いそうになった時、――クレドは確かに見ていた。  何故かはわからないが、目の前に大人の男と覚しき人物がいたことを。  そしてその人物はクレドの額に優しく触れると、手の平から寒寒しい氷色の光を出した。  その瞬間クレドは自分の体の毒気が抜かれていく感覚を味わい、次いで完全に意識は持っていかれた。  次に目が覚めた時には、二人ともガーネットの病室に寝かされていた。  園長先生達の中には安堵から泣く者もいれば、こっぴどく叱り付けた者もいた。  先生達の話によれば彼等はガーネットの門の前で発見されたらしい。  二人を包むようにして包んでいた大きなコートは黒く、上質の素材で出来ていた。 『誰か親切な方が助けてくれたのね』  そう言った園長先生の目は感謝と安堵でいっぱいだった。  もう二度とこんなことはしないでおこうとお互い約束した。  これが幼いクレドとキリエの一夜限りの脱走劇であった。
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