Behind ‐ 背後に ‐

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 目を開くのと同時に眩しい太陽の光と、それに負けないくらいの笑顔が視界に飛び込んでくる。  クレドはまだ明るさに慣れない目を細め微笑んだ。  ご飯ご飯と連呼する少女のために、クレドはすぐさま身なりを整えると台所に立った。  キリエは今無性にオムライスが食べたいらしい。  まだ料理は始まってすらいないのにきちんとテーブルにつき、こちらを見守っている。 「あとどれくらいでできる?」  もう一度いうが、まだ料理は始まっていない。  しかしキリエのためならば多少のことは軽くやってのけるのがクレドである。 「すぐに作るから、大人しく待ってて」 「はーい」  クレドは予告通りものの数分でオムライスを仕上げた。  とても一人で作ったとは思えない速さだが、キリエはこれが普通なんだろうと頷き、スプーンを握りしめて目の前にオムライスが運ばれてくるのを待った。  そしてテーブルに運ばれたオムライスを見て、キリエは大袈裟に喜んだ。  いただきますと言って、変な持ち方でスプーンを進めるキリエに、クレドはまた「今日もここで留守番するの?」と問うた。 「うん。するよ」  当たり前じゃない、とでも言うような当然といった顔をされたら、やめてほしいとは言い辛い。  クレドは小さく溜め息をついて、意味もなくもぐもぐとオムライスを頬張るキリエを見る。  キリエが言い出したら言うことを聞かないのはわかっていたが、それで無理強いできない自分も自分であると、クレドは彼女にはとことん甘いのだと情けなく思う。  昨夜キリエがクレドに隠した出来事が気になるが、明日はようやく仕事が休みなため、その時にでもさりげなく聞けば良い。  午前10時、クレドは昨日のようにキリエのための食事を作ってから家から出ていった。
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