Behind ‐ 背後に ‐

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 そしてクレドは後悔することになる。  何故あの時無理にでも聞き出さなかったのか、と。    キリエは出ていったクレドを確認すると、すぐにベッドの上に座って、昨日の少年が来るのを待った。  クレドには絶対に誰が来ても開けるな、と忠告をされてはいるが、このフォレストがどれだけ危険で陰鬱な世界であるかをちゃんと聞いてはいなかった。  それは汚いものに蓋をして、彼女の目に触れさせまいとしたクレドの落ち度であったのだ。 「早く来ないかな、ヨシュア」  しかしキリエはクレドの考えやヨシュアの企みなど知る由もなく、ただただ少年との出会いに希望や楽しみを馳せていた。  純真であるが故、彼女は無知で滑稽だった。  キリエがヨシュアとコンタクトをとった窓は、外から見れば人の目には付きにくい位置にある。  その窓を開ければすぐに薄気味悪い路地裏があり、ヨシュアにとってクレドのいない時間帯を狙えば、キリエと接触することは訳ない。  また、初対面の女相手に仕事をしなければならなかったクレドは、いつものように付け入らせる隙を見せないように、心を閉ざして、ただ義務のように客を抱いていた。  もう既に彼は性行という行為には何の感情も価値も意味もなかった。  これは仕事だから、と割り切った頭は既に麻痺している。  母のように自分を見守ってくれたジュリナの役に立ちたい。  キリエ以外に大切な者をクレドは確かに持っていた。  順位など決めなくてもわかりきってはいるが、クレドにとってはあの女性もまた、護りたい人であった。  クレドは自分の上で淫らに動いては嬌声を上げる女を、何処か他人事のように見て、今愛しい少女はどうしているのだろうかと、そんなことを考えていた。
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