1 chapter 新学年

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寮に着くなり、今日は学校が昼間までで時間があったからキリヤの部屋へ直行。 暇な時は大体そんな風にして時間を過ごす。 最早自分の部屋みたいに俺もカイトも使ってる。 キリヤも何も言わないからほんとに楽だ。 「でもよ、俺らももう2年なんだな」 「はえーよな」 確かに、1年前が嘘みたいに思う。 それだけ1年は長いようで短い。 「魔力量増えてるといいなー」 「そりゃ増えるでしょ」 「だといいけどよお」 緊張するなーと言うカイトにキリヤも同感する。 成長期のこの時期に増えない方がおかしい。 ・・・魔力が増えて喜んでたのなんて、いつ頃だろう。 今ではその逆を願ったりする。誰にも言えないことだけど。 「属性もなんか増えてたりしちゃったりしてー」 「それはないだろ」 「や!わかんねえだろ!」 普通の学生なら、こういう話って盛り上がるんだな。 そこら辺はまだ、よく分からない。 「ハズキも楽しみだろ?」 浮かない顔をしてたせいか、キリヤが気を使ってくれた。 気をつけないと。 「ん、まあね」 「ぜってえキリヤを越してやる!」 「やれるもんならやってみろ」 楽しそうに笑う2人。 それが少し、羨ましかった。 出されたお茶を啜る。腕のブレスレットが小さく揺れた。 明日、魔力検査か・・・。 嫌だな、そんなことを思っていると朝の夢を思い出した。 もう忘れたと思っていた感覚。 臭いも感触も、全部。今でも鮮明に思い出せる。忘れたい訳ではない。 だけど、時々俺を苦しめる。 夢となって俺に忘れるなと念を打つ。 やっと、あの息苦しいとこから抜け出せたのに。 「ハズキ?」 「・・・っえ?」 「聞いてんのかよ」 「カイトの話なん聞くわけないし」 「んだと!?」 そういう意味だと強気で呟く。 どうにか誤魔化せたみたい。 駄目だな、思い出すのは。せっかく自由になったんだ。楽しいことだけ考えよ。  
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