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魔物の血に染まる両の手。
それに握られている慣れ親しんだ武器もまた、青みがかった緑や黒で染まっている。
そうだ。
ここに立っているということは、たくさんの命を守っているということ。
それと同時に、またたくさんの命を自身が奪っているということ。
ここは、戦場なんだ。
その事実にまた吐き気がした。
するりと手から滑り落ちる武器。
上級魔法を連発した後のダルさが体に残っているのが分かる。
手にはまだブレスレットがついていた。
―――ああ、少し、疲れたかな。
何も考えたくなかった。
何もしたくなかった。
何も聞きたくなかった。
自由にしてみたいと思った。
鼓膜を震えさす雄叫びが、それはできないと現実に引き戻す。
諦めるように、じぶんは目を瞑った。
何も、考えないように。
意識が遠退く中、どこか遠くで自分の名前を呼ばれている、そんな気がした―――。
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