16 chapter 激情の紅

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過去に原因不明で死んでいった著名人は皆西の魔女の手によるものと推測されている。証拠を何も残さない、完璧犯罪。 なかには魔導軍総帥のような強者もたくさん居たはずなのに。 影に属する者達が殺められたのも、おそらく。 「野放しにしていいと思っていたわけじゃない。だけど証拠もないんじゃ拘束のしようがないし、簡単に捕まるとも思えない」 手の施しようがなかった。そう呟くリトスの顔に表情はない。 諦めでもなんでもない。そうさせられてしまった、彼女自身に。 言葉は続く。西の魔女の力と権力が大きな理由ではあるものの、それだけでもなかった。 「西の魔女・・・ユウキさんは、母上の双子の姉だ」 誰も言葉が出なかった。 しんとした空気は、やけに冷たい。リトスの言葉も温度を感じさせない。 たっぷりと時間をあけて、シーアは驚愕を顔に張り付けながら言葉を綴る。 「・・・・・え、お前の伯母?」 「・・・おう」 「双子の?」 「おう」 「・・・・・冗談か?」 「・・・本当」 知らなかった者の顔は皆同じ。似たような表情が綺麗に並んでいたが、それを笑う者はいない。
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