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西の魔女とは、西で生まれた呼び名であった。中央で暮らしていた頃、彼女は片割れである光帝の影でひっそりと生きていた。
その存在も、力も隠して。
だから誰も知らなかった。あれほどの化け物が存在していることに。知っていたのはそう、西の魔女の妹である彼女のみ。
「母上がこっちに嫁ぐ時、一緒についてきたって話だ。あの人が表立って動くようになったのもそれからだ」
「つまり何か?あの女の目的ってのは西でしか出来ないことなのか?」
「それは分からない。母上がそれに気付いていたのかさえ俺は知らない」
「・・・そういや、前国王と噂の王妃は今どこにいる?前王は病気で臥せってるって聞いたが、王妃は何してるんだ。あの人も十分な戦力・・・、」
戦力、だっただろう。
そう続けるはずのギルドマスターの言葉は喉の奥に飲み込まれる。
燃え上がる真紅に、熱が帯びた。それは触れてはいけないパンドラの。
冷たい、酷く静かな憎悪。
「確かに、父上は眠っている。あの日から、ずっと」
「ずっと・・・?」
「あの人の魔法で、あの日から一度も目を開けていない」
病気ではなく、西の魔女の魔法。
魔法なのか、はたまた別のものなのか。それは分からない。
前国王は、あの日より眠り続けている。
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