16 chapter 激情の紅

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「手は尽くした。でも、あの人に勝る術者はいない」 表情が抜け落ちたリトスは淡々と告げる。それとは裏腹に瞳だけは激情に揺れていた。 今この時も王の自室で眠り続ける彼の父。頼れるはずの存在はリトスの言葉も受け入れず。 リトスは1人で、戦うしかなかった。 「・・・なら、王妃様は?」 恐る恐るシーアは問う。 聞いてよいことなのか。リトスの顔を見れば一目瞭然。それでも聞かずにはいられなかった。すがるように。 落とされた言葉は、声は少し震えていた。 「・・・・・行方不明だ」 瞳に落ちる影は、諦め。 最善を尽くしたのだろう。今なお行方不明なのは。 「おそらく、生きてはいないだろうな」 誰の手によるものなのか。 誰もが予感していた。全てを狂わせた元凶。 あの日、王は眠りにつき、王妃はいなくなった。リトスは1人になり、今度はハズキがいなくなろうとしている。 連れていかれてしまった。西の魔女の手によって。 どんな目的で、何のために。それを知るのはたった1人。 もう、とリトスは呟いた。それはあの日誓った、かたい決意。 「もう誰も、失いたくない───」 リトスの瞳は、今も紅く燃えていた。
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