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俺達が立ち上がったのはほとんど同じタイミングだった。
ガタンッと椅子が立てる音が重なる。気付けば身体が勝手に動いて、教室内であるにも関わらず走り出していた。
「言ったろ?最高の思い出になるって」
「大きなお世話ですよ」
そんな2人の言葉も、ヤブキ先生の晴々とした表情も、今の俺には聞こえもしなければ見えてもいなかった。
ただ目の前にいる存在だけを。
手を伸ばし、勢いに任せて抱き付いた。小さな身体は難なく俺を受け止めてくれる。それだけで俺は満たされた。
あたたかい、生きているんだ、と。
「─────ハズキ!!!」
あの時から、たぶんずっと我慢してた。
それが今は、情けなくも涙がとまらない。どうでもよかった。恥ずかしくもない。
だってあの時とは違って、とてもあたたかい気持ちなんだから。
「うん。久しぶり」
「生きてっ・・・よがった、ハズキぃ」
「ちょっ、そんな号泣しなくても」
「だって・・・」
だってもう、本当にあのまま会えないんだと思ってたから。
こんなに嬉しいことってないよ。
だからもう、あんなに心配させたこととか辛かったこととか、無茶をしたことも全部水に流してあげる。今こうして戻ってきてくれたから。
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