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授業が始まる前に。
席に着く前に、これだけは言っておかないと。席に向かおうとするハズキを引き留める。
時間はたっぷりあるんだから。だけどその前に、これだけは。
カイトもキリヤも同じことを思っているのか、同じようなタイミングでハズキを見る。
言いたいことは皆一緒だね。
キリヤが、カイトが、そして俺が口を開く。ずっとずっと言いたかったこと。そして、聞きたかった言葉。
「ハズキ」
「ん?」
「・・・ありがとな」
「それから、────おかえりなさい」
全部全部に、ありがとう。
俺達が言いたいことは、シンプルにそれだけ。
それから、おかえりなさい。
帰ってきてくれて、ありがとう───。
微かに驚いたように、ハズキは右目を見開く。
それからほんの少し、照れ臭そうにうつ向き微笑んだ。
そして、ようやく。
1年越しに、ずっと求めていた言葉をハズキはようやく俺達にくれる。笑顔を添えて。
おかえり、ハズキ・・・。
「───────ただいま」
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