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なんだかんだで、半日が経過した。外はもう真っ暗。
クスノキから教わったことは、言葉の発音と、この国の文字の読み書き。東京と呼ばれるこの場所は、どうやら私の知っていた文字とは違う文字を使うみたい。さっきの本が読めないのは当たり前だったようだ。
「マギサさんは、記憶力が特化しているようですね。すぐ、覚えてくれて助かります。」
「そうですかね…。でも、これで蝶々様の役に立つなら……」
「ふふっ。貴方なら、すぐ蝶々様の隣に立てますよ」
クスノキが笑う。
隣にたつ。それは、私と彼の関係が平等になるというのだろうか?この私が……私なんかが彼の隣に立っていいの?
「さて、日も落ちてしまったことですし、今日はこのぐらいにしておきましょう。お疲れ様でした。」
「……あ、はい。ありがとうございました。」
終わった。早く彼の元に行きたい。早くちゃんと喋れるとこを見せたい。彼は、彼は何処に…
「蝶々様なら、二階の書庫に居るんじゃないかしら?ついでに、夕食の準備がすぐ終わるから早めに御戻りになるよう言ってもらえる?」
「はいっ!」
考えていたことを見透かされていたのは恥ずかしいが、すぐ彼に会えるのは嬉しい。
私は、直ぐ様部屋から飛び出すと、二階へ続く階段を探す。
ここへ来たときの第一印象は大きい。だったが、今は無駄に広いだ。なんで、こんなに広いの?しかも、迷路みたいにグルグルしてる廊下。東京の建物は全部こういった造りなのだろうか。
「やっと、あった…」
バタバタと走り回りやっとのこと見つけた階段。それを駆け上がる。次に目指すは、書庫。書庫って何処?どれも同じドアじゃない。まったく見分けがつかない状態である。
「ちょうちょ…どこ?」
ひと部屋ひと部屋開けていくも書庫らしき部屋は無く、迷子になってしまった。眼には、うっすら涙が浮かぶ。
東京の建物なんて嫌いだ。
「あれ、マギ?」
「!!」
グルグル回っていたら、後ろから聞き覚えのある声がした。
勢いよく振り返り、声の主に向かってダイブする。
「ぬわっ?!え、ちょ、どうした?」
「まままま、迷子になるかと思ったーー!!」
「ぶっは、迷子て…迷子て!!」
彼は笑う。この国の言葉で表すなら「腹筋崩壊」。そのぐらい盛大に笑っていた。
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